慢性的な人手不足や老朽化による故障リスク、コストばかりが嵩む作業など、いま多くの企業で業務効率化を必要とする課題が山積みとなっています。しかし、その解決策となるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は、DXに精通している人材が足りないこともあって、遅れ気味の企業が多い状況です。
また企業内では「AI(人工知能)やデータ分析って本当に必要なの?」というDX不要論も少なくありません。そこで本記事では、AIやデータの利活用による自動化や効率化、新たなビジネスモデルの創出など、さまざまな事例をご紹介します。
企業が市場での競争を優位に進めるだけでなく、従業員一人ひとりのキャリアアップにもつながりますので、ぜひデジタル化の現状を把握しましょう。
データ分析を活用するメリット
企業がデータ分析によってできることは多岐にわたりますが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。まずはデータ分析のメリットを知ることが大切です。
データ分析の主なメリット
- 意思決定の改善:企業はデータ分析を通じて、客観的かつ定量的な情報に基づいた意思決定が可能になります。直感や主観的な判断に頼るリスクを減らし、より信頼性の高い施策を実行することはとても大切です。
- 生産性の向上:日常的に行う作業のプロセスや管理状態について分析すると、ムダや非効率な部分の発見につながり、そこから業務を見直し・改善できます。
- 潜在ニーズの理解:顧客の購買履歴や行動パターン、好みなどを分析すると、顧客のニーズや行動に対する理解が深まります。これにより、顧客一人ひとりに見合った製品・サービスを開発できるので、顧客満足度の向上につながります。
- リスク管理:データ分析は、ビジネスのリスク(市場の変動や財務上の課題など)を特定し、リスクに対する管理や軽減のための戦略立案が可能になります。
- ビジネスチャンスの発見:データ分析を行うと、未開拓の市場やセグメント、既存の製品・サービスに対する改善の余地など、新たな気づきがあります。これはビジネスチャンスであり、企業が成長し続けるためにも重要です。
こうしてデータ分析を活用することで、企業はより情報に基づいた戦略を立て、市場での競争を優位に進められます。そして、データ分析やそれに伴う施策に役立つのがAIです。
AIの活用事例
AIは将来の需要やリスクの分析など、ビジネスのさまざまな場面で活用されています。ここではAIの活用事例を次の5つの場面からみていきましょう。
5つのビジネス場面からみるAI活用
- 1.需要予測
AIを活用すると、人間が行う手作業のデータ収集・管理や経験則に頼る受発注よりも精度の高い需要を予測できます。過去の販売データをAIで分析し、将来の需要予測から、効率的な仕入れや在庫管理が実現可能です。 - 2.故障予測
AIは故障の予兆を察知することが可能です。たとえば、製品をつくる機器をモニタリングすることで、異常値を検知し、機器が故障する前に修繕や取り替えられるようにします。 - 3.適切なサービスの提供
たとえば通販サイトで顧客の行動履歴や購入履歴など、AIを使ってデータを分析することで、顧客の好みに合わせた商品をサイト内で表示できるようになります。 - 4.見積もりの自動化
AIは作業を自動化することが可能です。建設業の事例でいうと、過去の図面データや見積もり結果、発注元の予算などをAIで分析し、自動的に見積もりを作成しています。 - 5.採用判断
AIは意思決定をサポートしてくれます。たとえば応募データを分析して、採用可否を判断するなど、すでに転職エージェントではAIを活用した採用マッチングも盛んです。
AIは人間よりも正確な現状把握ができるため、データに基づいた予測や意思決定による業務効率化は幅広い業種に適応しています。
業種別でみる業務効率化の事例
実際に、企業がAI・データ分析の活用によって業務効率化を実現した事例を業種別にご紹介します。
あらゆる業種で役立つAI・データ分析
- 製造業
製造業でのAI活用は、品質向上とコスト削減の大きな味方です。空調機器メーカーのダイキンは、AI・ビッグデータの活用によりエアコンの不具合や交換が必要な部分を特定し、異常の予兆も検出できるようにしました。それにより、故障時に一度の訪問で作業を終えるなど、目に見えて作業効率が改善したとのことです。
「日本経済新聞2023年1月21日(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC105LP0Q3A110C2000000/)より引用」 - 金融業
三井住友フィナンシャルグループは、日本マイクロソフトと協力して、従業員を支援する対話ソフトを独自開発しています。対話ソフトは、企業の融資判断に必要な資料や財務情報をもとに顧客に提案する資料の草案を効率よく作成してくれるので、作業時間が大幅に削減できます。従業員の生産性が高まればサービスの質が向上し、顧客満足度も高まるため、AIの活用メリットは非常に大きいと言えます。
「NHK2023年4月11日報道(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230411/k10014034721000.html)より引用」 - 小売・サービス業
大手スーパーのイトーヨーカ堂は、価格や商品陳列の列数・気温・降水確率などの気象情報・曜日別の客数などをAIが分析して、商品の販売数を予測するシステムを運用しています。これにより、各店舗の発注担当者は作業負担が軽減され、スムーズな在庫管理が可能になりました。
「2020年8月31日イトーヨーカ堂NEWS RELEASE(https://www.itoyokado.co.jp/__resources__/537d8843-ee9b-4f55-8dcf-b03f5c16f04d.pdf)より引用」 - その他
・高齢化や後継不在の課題を抱える農業では、AI技術を使ったロボットで収穫作業を自動化
・2024年問題で揺れる物流業界では、AIによるピーク時期の予測や物流量の最適化
・不動産業界で広がるAI活用による物件選び
など、ビジネスのあらゆる場面でAI・データ分析の活用が役に立っています。
AI・データ分析に必要なスキルとは?
ここまでAI・データ分析が企業にもたらす変革の可能性を探求してまいりましたが、人材育成に関わる企業の担当者も将来のキャリアを考えている従業員の方も、AIやデータ分析を活用するにはどうすれば良いか気になっていると思います。
そこで最後に、AIやデータ分析を利活用するために習得すべきスキルをお伝えします。
- プログラミング言語の学習:とりわけPythonやRはデータ分析とAIに広く使われています。これらの言語はデータの操作・分析・モデリングに適しており、多くのライブラリやフレームワークが利用可能です。
- 統計学と機械学習:基本的な統計学の知識はデータを理解し、適切な分析を行うために必要不可欠です。また、機械学習のアルゴリズムとその適用方法を学ぶことも非常に重要です。
- データ処理とクレンジング:私たちが日頃から扱うデータは不完全なこともあります。そのため、データを適切に処理し、分析しやすい形に整えるスキルが必要です。
- その他
SQLなどのデータベース言語を学びデータの格納・取得・管理の方法の理解、分析結果をわかりやすい形で視覚化する可視化技術、論理的思考なども重要です。
まとめ
現代はインターネットが発達しているので、先ほどお伝えしたAI・データ分析に必要なスキルはYouTube動画や解説記事などでも学べます。しかし、企業の成長に大きく貢献する専門的な技術なので、きちんと体系化された機関で学ぶ方が、着実にスキルを身につけられるでしょう。
AI・データ分析の活用がビジネスチャンスであることに気づき、ぜひこの機会にそのためのスキル習得を目指してみてはいかがでしょうか。
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